そう思いながら、俺は手の中の小さな包みを握りしめた。
ま、いっか。
「サンキュ」
俺はそれを少し持ち上げると、マスターにお礼を言って店を出た。
店を出ると、アスファルトからの照り返しでムッとした熱気に包まれた。
自転車にまたがって、腕時計で時間を確認する。
「やべ……」
もう針は5時をまわろうとしていた。
今日は、未央と待ち合わせをしていた。
夕日に染まるビルの合間を鉄道が疲れた音をたてながら走っていく。
その真下をくぐり抜けて行くと、ミシガン湖が遠くに見えた。
街全体をオレンジに染める太陽は、次第にその先に沈もうとしている。
じっとりと肌に纏わり付く湿気で額にはじわりと汗が吹き出る。
その汗が風に吹かれて、ひんやりと冷たく感じた。
「別に家で会えるんだから、わざわざ外で会わなくても……」
俺はブツブツ言いながら、自転車をこぐ足に力を入れた。
事の発端は今日の朝。
――――――……
――――……
『――は? なんで?』
『だって、聞いたんだもん』



