[未央sid]
★
真っ青な空と、太陽が近い。
入道雲を下にしながら、あたしはさっきから落ち着かない。
小さな窓から見下ろすと、大きな雲の切れ間から地上が見えた。
着いた……。
とうとう帰ってきたんだ。
日本へっ!
じーーん……。
なんか……感動……。
なんて1人先走りながら涙目になったあたしはガバッと振り返った。
「見て見て要っ、着いたんだよッ」
興奮気味に振り返ると、ヘッドフォンを耳に当てた要が、頬杖をついて目を閉じていた。
その真っ黒な髪が、飛行機の動きに合わせて揺れてる。
「要?」
遠慮がちにその顔を覗き込んだあたし。
すると、要の長いまつ毛がほんの少し持ち上がった。
伏目がちの視線が一瞬だけ絡まる。
でも……。
「わかってるから、ちょっと黙ってて」
「へ?」
さも迷惑そうに言うと、要はまたキツク瞼を閉じてしまった。
……え?
えええ?
もしかして、要ってば……。
「……高所恐怖症?」
頬が緩む。
やばい、笑いそう……。