そう言いかけて、壁に張り付いていた未央の姿を思い出した。
あれは完璧、俺と美咲の会話聞いてたろ。
「なんだよ、肝心なとこ聞こえてなかったんだ。俺はてっきり全部聞いてたのかと思ってた」
ポケットに手を突っ込みながら振り返った俺は、未央に視線だけを落とした。
「え、あ……あはは。 あれは!……えと」
ブルーの月明かりの中、未央は引きつった笑顔を見せた。
「せっかく今、日本も夏休みだし。ちょうどいいから一回帰ろうと思ってたんだわ」
「……そうなんだ……」
シュンとうな垂れて小さくなっていく未央。
なんだかおかしくて「フン」と鼻で笑うと俺は未央を追いやるように壁に片手をついた。
「――で?」
その耳元に唇を寄せて。
挑発するように未央の瞳を覗き込むと。
「未央は俺に行って欲しくないんだ?」
「…………!」
掠れた声で、そう言ってニヤリ。
形勢逆転、だな。



