「あぶなーーいっ!!」


バンッ


ボールが道路をゆっくりと転がってゆく。そして目の前に少女が立っていた。

少女はオレにやさしく微笑みかけた。そしてポケットから何かを取り出してみせた。

オレをひいた車はもうどこかへ走りさったようだ。

薄れゆく意識の中で少女がかけてゆく姿が見えた。


―そういえば私、事故の直後小さな女の子があっちに走っていくのを見たわ


そうだ、思い出した。妹は死んでなかったんだ。
オレは妹をかばって車に轢かれたんだ。
すでにオレは死んでたんだ。それを受け入れられなかった。

妹が最後に見せてくれたもの、それはあの腕時計だった。
オレがいつもしていたあの腕時計。


妹からの大事なプレゼント。