…―コイツ、ほんとは案外、いい奴かも知れない。


空になったグラスを流しに運ぶ姿を見つめる。


時間は、既に23時を回っていて大きなあくびが出た。

「子供は寝る時間」


「子供って言うな…」


そう言い返すと小さく笑って部屋に戻る。


「おやすみ」


「おや…すみ、悠…斗さん」


初めて名前を呼んだ事に驚いたのか一瞬、こっちを振り向いて微笑む。


「おやすみ、歩花ちゃん」

「…?」


リビングのドアの向こうでアイツが何か呟いたように思ったけど、聞こえなかった。


誰かに"おやすみ"なんて言ったのは久しぶり…


ゆっくりと眠れる気がした。