私の名前を読める人はいない。

私は私が好きな人の名前を知らない。

聞いたこともない。

でもね?

『恋はしてると思う』

仕事中だけど。

店内は今日も客で溢れ反っている。

「はいどうぞ」

笑顔を貼り付けて応対する内心は。

(帰りたいんだけど!)

なんて心は叫んでる。

仕事はお客さんなしではやれない。

(だけど多過ぎるし)

私は溜め息をついてお客さんにみえない場所でつま先立ちした。

筋肉が足がぱんぱんで立ってるのが辛い。

(だけど私が望んで働いてるんだよね)

ちらっと周囲を見渡すと幼稚園の帰りの親子の後ろの席に彼はいたんだ。