桃川中学校吹奏楽部

「ちょっ・・やだーっ!!怖いっ怖いっっ!!」


初めての二人乗りは


ちょっと怖かった


「しっかりつかまってねーと落ちるぞ」


「嫌だー怖い!!降りる!!」


「もーここまできたらあと5分くらいだって!おろさねえ!」


自転車のかごに入ったあたしのカバンの中は


淡いピンク色の包み紙のチョコレートが揺られていた

 
「ついたぜー」


 
「怖かった・・」


あたしはちょっぴり涙目


「なんだよお前だっせえな。泣いてんのかぁ!?」


綾瀬くんはそう笑った


「なっ・・泣いてなんかないし!」


「入るぞ」


「おじゃまします・・」


「あら、優里亜ちゃんいらっしゃい。ハルがいつもお世話になってます・・」


出てきたのは綾瀬くんのお母さんだった


綾瀬くんちにくるのは3回目。


ちゃんと会うのは初めてだった。


「あ、いえいえ・・」


「母さんもーいいから、石澤、俺の部屋行っといて」


「はいはい」


そうして私は綾瀬くんの部屋に行った


何度行っても


やっぱ緊張しちゃう


だいすきな人が


となりにいるってこと


それはたまらない。


・・なんてチョコ渡そう?


わかんないよ・・


生まれて初めて男の子のために作ったチョコレート


あたしはカバンの中で淡いピンクのリボンをなでた


 
「あ、待たせたな」

 
綾瀬くんはサイダーを持ってきてくれた


今日がバレンタインだということを綾瀬くんは分かってるのかな?


そんなこと忘れてるのかと思うくらい綾瀬くんは自然だった

 
「さーっ、あとちょっとだなあ、テスト。がんばるしかねえな!」


「今日は英語だね」


「そうだな!えっと・・」


綾瀬くんは教科書とノートを広げる

 
「あっ・・あ・・やせくん?」


「何?」


そう綾瀬くんは私を覗き込む


「はい、チョコ」


そう言っただけだった


めっちゃ


めっちゃ


恥ずかしかった