男は払われた手に触れると、へらへら笑った。
「冷たいなぁ…
まぁ、こんな事してる場合じゃないんだけどねぇ。」
マリスのヘラヘラした顔が真剣な顔つきに変わった瞬間、あたしはその変わりように嫌な冷や汗が出てくる。
「実は、君に忠告しにここまで来たんだよ。」
「忠告?」
あたしはオウム返しに言うと、マリスは一歩あたしに近づいた。
「選ばれし者を探す旅をやめろ、やめなければ…」
そして、マリスはまたあたしの方に一歩歩んできた。
逃げようと思っても、金縛りにあったかのように体が動かない。
そうこうしてるうちにマリスは、あたしの傍まで来て、そして耳元である言葉を囁いた。
その囁いた言葉にあたしは息が止まりそうになった。
マリスはあたしの耳元から離れて、窓側に向かう。
「ということらしいから…
本当は俺もこんなことしたくないんだけど、でも、"ボス"の命令は絶対だからさ。」


