「ほっほっほっほっ…」
そんな空気の中、突然運転席で田村が笑い出した。
「お嬢様、咲哉様は貴女との初デートをそりゃあもう楽しみにしてらしたんですよ。運転手の私と車を貸してくれとお父様に無理矢理お願いしてまで、貴女とのデートを大切な思い出になさりたかったのでしょう。私もこんな年でそんな素敵なデートのお手伝いが出来るなんて、嬉しいんですよ。ここはこの老人の顔に免じて、楽しい初デートに致しませんか?」
気が付けば、田村は近くの公園の駐車場に車を止めていた。
そして運転席からこちらに振り向き、にこやかな笑顔で小さな可愛い花束をさつきに差し出した。
「こちらは咲哉様からのプレゼントです。お嬢様、お受け取り下さいませ。」
パッとさつきに笑顔が出た。
「可愛い花束…咲哉ありがとう!凄く嬉しい!あのね…私も今日楽しみにしてたの。咲哉がそんな風に考えていてくれてたなんて知らずに…ごめんなさい。」
「い、いやいいんだよ。さつきが喜んでくれるのなら…」
さっすが田村!!凄いぜ!!
花束はきっと…
悔しいけど親父の差し金だな…
動揺する僕に田村がウインクした。
まだまだ親父には敵わないや…

