抱けないあの娘〜春〜




僕は親父の携帯に電話する。



「もしもし、親父?」


「おう、咲哉か、元気にやってるのか?」



「あぁ、元気。今日練習試合だけど、先発メンバーで出てさ。僕サヨナラホームラン打ったぜ!!」



「お〜やるじゃないか!頑張ったな!」



「で、お願いがあるんだけどさ…」


「何だ?」


「明日一日、田村貸して?」

「田村を?何でだ?」


「いや…ちょっと出掛けたいんだ。」


「しかるべき理由が無い限り、田村は貸せないな。明日だって私は大事なロケが入ってるからな。で、言えない理由なのか?」



「う…あの…さ、明日デートなんだよ。その娘、デートしたこともないウブで可愛いんだよ。だから、初めてのデートを楽しませてやりたいんだ。」


「ふぅ〜ん。初めてのデートか。甘酸っぱくていいな!!お前がそんな事をしようなんて珍しいじゃないか。そんなに惚れてんのか?」


「……そうだよ。悪ぃかよ…」


「ははっ、若いって羨ましいな!そうか、その彼女の初デートをいい思い出にしてやりたいってことか。よし、大事な初デートだ、田村を貸してやろう。金はあるのか?」


「出来れば…そっちも援助してくれると有り難いんだけどさ。」


「わかった。じゃあこうしよう。明日、田村をお前の寮の前に迎えに行かせる。夜は彼女も一緒にホテルでディナーをしよう。母さんも呼んでおくから。いいな?」


「初デートでいきなり自分の親に会わせるのかよ!!そんなの嫌だよ。何か恥ずかしいし…」


「問答無用!!」