「ショート行くぞ〜!!」


「うっし!!来いや!!」



練習試合前のシートノック、僕は怪我の為温存した諏訪先輩の替わりにショートのポジションで淡々とノックを受けていた。


久々の先発試合。いい緊張感の中、動く体も軽い。


一通りのノックを終え、ベンチに戻る。



「高村、調子良さそうだな。今日は頼むぞ!」


と諏訪先輩が背中を思い切りバシッと叩く。


「いってぇっ!!諏訪さん、加減して下さいよっ!試合前に怪我したらどうするんっすかっ!!」



「んなやわに出来てねえだろ。今日の相手の打順から行くと三遊間に相当ボールが集まりそうだ。ショートライナーやベースカバーを丁寧にな。で、今日、さつきが観に来てるぞ。ほら、ベンチの裏見てみろ。」



「えっっっっ!?」



運命の出会い(僕的に)から数日、さつきさんに返しそびれたハンカチを今日の御守りとしてこっそり(勝手に)ポケットに忍ばせていた僕は、諏訪さんから鳩尾にパンチを喰らった気分だった。



(さつきさんが来てる…)



心臓がバクバク言ってる。どこにいるんだろう、ソッコー探したいけど諏訪さんの手前、そうもいかない。


尋常じゃない気持ちをを必死に隠し、
「そうなんすか。」



とクールに返す僕。