アイオンとユーリア

町の中には父と母や、妹のユーリアや
友達たちがいるはずですが、勇敢なこの
少年にも、そのときとっさには全く何も
思い浮かびません。

アイオンは泣きながら後ろを振り返り、
森の中に逃げこうとします。

しかし振り向いた少年の心臓は跳ね上が
り、一瞬息が止まりました。

アイオンの後ろには、魔術師のような
白いローブを着、右手に鞘をつけたまま
の剣をもった、長身の老人が立っていた
のです。

炎を照り返している老人の黒い目は、
じっと少年の顔を見つめ、少年は怯えて
後ずさりしました。