「拓……」
「なんだよ?」
「ありがとう。大好き」
……え? 今ナツなんて言った?
驚いてナツの方を向く俺。
そこには少し恥ずかしそうな顔をしたナツがいた。
「ほら! 早く帰ってゲームしよ?」
今度は俺が引っ張られた。
数時間前に俺が全力で走った道を二人で黙って歩いた。
手を繋いで。
夏とはいえ四時にもなってない道は暗い。
だけど俺の気持ちはなぜか明るかった。
「なあナツ」
「……なに?」
「今度二人で遊びに行かね? 夏休みなんだしさ」
「……うん」
中学最後の夏休み。
俺の気持ちが、揺らぎ始めた。
〜完〜