中学最後の夏休み《短》


「理由なんてよくわかんねえよ」

ナツが俺の顔を真剣に見つめている。

少し座りなおして体をナツの方へ向けると、古いベンチが少しきしんだ。

「ただそういう気持ちには好きじゃないとなんねえ。だから俺は好きって気持ちが言葉だけじゃ表せねえときにそういうことをしてたんだ……と思う」


最後の“思う”は本当は付け足さないほうがよかった。

でも本当にわからないんだ。

今言ったことに嘘はない。

だけど本当はこんな簡単に言葉に出来ることじゃないんだよ。


ナツはずっと黙っている。
そろそろまじで補導されそうだな。

「彼氏も私が好きだからそういうことしたかったのかな?」

と、そう考えてたとき、ナツがやっと口を開いた。