小絵がこの下宿屋を選んだのはー


マンマのことが気にいったことも、理由のひとつだが

三階の部屋にはテラスがあり、そこからはアルノ川が 見え-


ウ゛ェッキオ橋が、眺められたからだ。


小絵がこの景色を初めて目にした時には、


目からうろこという-
気がした。


今まで、見たこともないような美しい景色だったからだ。


だから、小絵の毎日はとても充実していた。


それに、マンマの亡くなった主人は、生きていた時は金細工職人をしていたそうだが、このことも-


小絵が心ひかれた。理由かもしれない。


マンマは、その主人が亡くなった後に、この下宿屋を始めたらしいが-


この建物に、たどり着くまでの道ときたら-


細い路地が永遠に続き、
その幅は、小絵が自転車を ついて、


やっと歩けるという、程度の狭さだ。


しかし、だからこそ-
ホテル業者に買収されなくて、済んだのかもしれない。