19世紀に建てられたというが、今も昔と変わらない。


昔からのままに緑の芝生が広がり、涼やかな風が吹き抜ける


静けさと緑に包まれて、 ホテルというよりは…


大邸宅のようだ。


そのホテルのクラシック
ダブルの部屋に結城圭介が 泊まり、


小絵は、シングルの小さな部屋に泊まることになっている。


小絵は結城が待つ、タクシー乗り場へと急いだ。


仕事とはいえ、小絵は結城という、


初対面の男と二人だけで、旅行することに、
なったのだが、


不思議にも、いやな気は
しない-


-結城様、お待たせしました!…では、ホテルへ ご案内致します-


小絵と結城を乗せたタクシーは、ホテル・リ-ジェンシ-へと向かっていた。



12、3分も走ったら、 サンタマリア・ノウ゛ェッラ駅の前を通過-


そこからは左へ折れ、 サンマルコ美術館の前を通り-


考古学博物館をも通り過ぎて、二つ目の角に来ると-

ダッツェリオ公園が見えて来る。その角を曲がれば、 ホテルに着く-


所要時間は約30分ほどだ。

二人を乗せたタクシーは、緑の中へ飲み込まれるようにして、


ホテルの敷地へと入っていた。