『紺碧の空、雲ひとつなし こんな日はめったに無い わ。
ラッキーな結城様、早く 私のところにいらして』

小絵は胸に当てた小さな旗を、両手でピンッと- 張り直していた。


待ちどうしくて、じっとしているのが苦痛になっていた。

もう、そろそろゲ-トを
出ているはずなのに-


小絵が待つ、日本人夫婦はまだ現れない。


小絵がいる、このフロア-の後方には税関があり、

飛行機を降りた乗客たちはそこで、通関のための、 手荷物検査を受ける。


それを無事にパスすると、 この小絵の待つフロア-に 出てくることになっている。


手荷物検査に、もたついているのだろうか?


未だに、現れない結城夫妻を、心配している小絵だが、

改めて、心を落ち着かせ、再び旗を両手でピンッと-
張り直して、胸に当てていた。


やがて、小絵の7m位の目先にいる一人の日本人男性が、手を振っていた-



しかし、小絵が待っているのは二人の日本人-


たしか、男女のカップルだ。どうなっているのか-


小絵には、さっぱり理解できなかった。


だから、小絵は少し頭をかしげて、けげんな顔をして見せたのだが-


その男は、手を振るのを止めない-