「母さん!
帰って来たでぇ- 」


圭介がいくら呼んでも- 母は出てこない。


「おかしいなあ~
帰ってくると
言うたのになあ… 」


一人で勝手知ったる-
わが実家に上がる。


「どこへ行きよったんやろ おかしいなあ! 」


もう、田舎弁になっている-


母が家に戻ってきたのは、 それから、一時間も後-


「あんたに、田舎の味を よんだげよう、
そう思たさかいなあ… 」


母は買い出しに出掛けていたのだ。


息子がいくつになっても- 母親には、子供なのだから

美味しいものを食べさせたい、その思いでいっぱいなんだろう-


「ほんま、楽しみやね! 母さんの手料理、
久し振りやなあ~ 」


しばらくすると-


茶の間の食卓には、母の自慢の料理が、並んでいた。

「サア~でけたで!
圭介、はよお食べ-」


母の呼ぶ声に、口の中には 唾液が湧いてきた-


-わあ、えらいごちそうや 何年ぶりやろなあ~


こんな料理を手作りと、 言うんやろなあ~


『そないに、珍しそうに- 家では、何を食べていた んやろ 』