『やはり、この世の海では無いのだ。
どこまでも、青くて広がっているだけだ。
地球であれば、島のひとつも目に入るだろうが、
このあたりは無さそうだ。
いったい、どのあたりまで船を進めたらいいのだろう。
しかし、今はこの鳩に導かれて、ほんとうの地球の海へと脱出しなくてはならない …』
そんな、圭介の気持がわかったのか…船の舳先にいた鳩が飛んだ。
-圭介心配しないで〃
これからは、私の飛ぶ方へ船の舳先を変えて進むのよ〃-
『心配しないで〃
なんて言われても…無理。
僕の胸は、不安が広がっているんだ。
わかって下さいよ!
この青々とした海に浮かぶのは、この船だけなんだ』
そのとうりだ、光りと陰の神秘が聖なる海をおもわせている。
光りといっても、月の光りだが…
その光りに照らされた、 青々とした海の底の珊瑚礁が、白く浮かび上がるように見えている。
陰になっている海の底には岩場が広がっているのだ。
だが、不思議だ。
船の底が擦れても、音もしないし、船は微動だにもしなかった。
それに、よく見ると…
船の帆は下ろされている。
なのに、船は進んで行く… 音も無く、進んでいる。
時として、静寂の囁きのような波は感じることはあるが…
圭介が、ヨットに乗り外洋を相手にするのとは、
おお違いだ。
壮大な自然の外洋の海の上では、 押し寄せる波と風をも支配する。
そして…
刻々と変わる自然と同化し、
時には厳しい自然に抵抗しながら、水平線の彼方へと向かうのだ。
しかし、今はあの世の海だ。どうしようもないのか…


