早苗は…そんな不安な気持になっていたが、
夜になったら、夫の言っていた天空を見上げてみようと思った。
そして、天の川の銀河の道を見つけたら、夫の星が輝いてくれるのだ、きっと…
自分に、そう言い聞かせたら、不安が期待に変わっていた。
その夫が無事に巡礼路に着いていたら、きっと胸には首から吊り下げた。
帆立て貝が揺れていて、木の杖を持ち、
水を入れた瓢箪を肩にかけた姿の巡礼者になり歩き出しているのだ。
だからもう夫は、遠い昔の中世の時代に戻ってしまった人…
かっては早苗の夫であった人だが…
きっと、野を越え山を越え、険しい道を歩き聖地ガリシアを目指して歩くのだろう。
だが、夫は途中にある修道院で、しばらくは祈りの日々を送ると言っていた…
『私たちのために、祈りを捧げてくれるのだわ…
ありがとうございます』
やがて、病室の窓の向こうに、夜が来て海の上に見えている星たちが輝きだしていた。
圭介の意識が戻り、回復は時間がかかっても、見込めるということになり…
再び眠ってしまった圭介だが、心配は無かった。
安心した早苗は、弟に圭介のそばにいてくれるようにと頼み、この病院の屋上へと向った。
屋上からの天空は素晴らしい… もちろん、
この天空のどこかに夫がいるかもしれないという、
子供じみた思いだが、早苗は夫の言った言葉を信じている。
そうでもしないと、とてもじゃないが、耐えられそうにない早苗だった。


