夫は早苗から、目をそらさない、とても真剣だった。
-その時、聖ヤコブ様は… この私に、こうおっしゃったのだ。
「そなたの息子が、今まさに冥界へと向かっているが、
この度は、悪しきものによりて図られしこと…
いまから、急いで息子のもとに行き助けてやりなさい」…
圭介のことは、天から見ていたのだが、助けてやりたくても、できなかった。
神の命令が下されなければ、私は手出し出来ないのだ。
黙って見ていて、心配ばかりしていたんだよ-
「そんな偉い方の命令でいらしたの。
それに、あなたの胸に見えている貝殻、それは何なの〃」
-これは帆立て貝なのだが、聖ヤコブ様の元…
聖地へと向かう巡礼者が、 下げる通行証なのだ。
その昔、聖ヤコブ様の亡骸が海辺に漂着したことに由来する。
巡礼者のシンボルとして、私も首から吊り下げている-
「ほんとうですね。
あなたの首から吊り下がっていますね」
-そして、この手に持っているのは、もう一つの帆立て貝だ。
これを圭介の首にかけてやりなさい。
きっと、導かれて蘇るだろう。銀河への道が見えて、
帰って来ることが出来るだろう-
「ほんとうなの、あなた〃 圭介を神さまは帰して下さると、おっしゃったのね。
ありがたいことですわ。
神様にも、あなたにも感謝申し上げます」
早苗は心から感謝した。半分は諦めていたからだ。
早く息子の首に、この帆立て貝をかけてやらなければ
あせりだしたが、夫の言う話はまだまだ終わりそうにない…


