それから…どれほどの時間が刻まれたのか…
小絵には、わからないくらい長かった…
それほど長い時間、結城に抱かれ、愛されていたということになる。
しかし、どんなに愛されたとしても、
朝になれば、結城の姿は無かったのである。
-やはり変だわ…
だって、朝になっても結城は、ベッドにいるべきなのよね-
それから、しばらくの間… 夜になると、小絵に会いにくるようになっていた。
しかし、結城は来るたびに、身体の冷たさが増していた。
それでも、小絵は結城のことが愛しくて我慢した。
結城だって、凍りそうな小絵を心配してくれたが、
ほんとは小絵のことを、愛したくて離したくなかったはずだ。
そんな夜が七日間も続いている。
ほんとうに、結城なのだろうか、そうでなければ誰…
結城はあのように、冷たい身体ではない。
熱いくらい体温は高くて、夏は汗が吹き出しそうになる。
その代わりに、冬は湯たんぽ代わりになる。
そんな結城には、似ても似つかぬ人のようだ。
それに、テラスの下の桟橋には、ヨットが着岸したという形跡はない。
そして、今夜は満月…
テラスに息子の碧と小絵はいた。
その夜の海は静かなものだった。べた凪ぎで波は息をひそめるように隠れていた。
やがて、その海の中に…
空に出ていたはずの満月がいて、
すまし顔で小絵を見ていたが、次から次へと空から星が落ちて来て…
海の中には天の川ができ、光りだしていた。
今度は海の向こうから風が吹き上げられ、小絵と碧を取り囲んだ。
-ヒカルちゃん、
寒いからお家の中に入りましょうね-
小絵が、そう言っても…
息子の目は、海の向こうに注がれていて、身動きひとつしない。
-パパが、こようとしているのね…
あなたには、それがわかるの-
その目は凝視しているというほうが、正しいのかもしれない。
しかし、小絵には訳がわからない。時間が消え去っていた。


