結城は、小絵と生まれる子供の生活のことを考えて…
早く妻とは離婚して、小絵と結婚しようと思うようになっていた。
しかし、小絵のほうは…
結城が、そんなことを考えているとは、わかっていない。
それは、小絵がそんなことを結城に、望んでいないということだ。
小絵は、どこまでも楽天的な性格で、自分のことも、 生まれる子供のことも…
特別考えなくても、どうにかなると、思っているからだ。
だから、今日も朝から…
ピアノを弾いて大きな声で、歌いだしている。
その歌は、ム-サイへの賛歌だ。イタリアの下宿のマンマが教えてくれた。
この歌を歌いだすと、なんだか不思議な気持になる。
小絵の身体が軽くなり、
何故か…ふぁ~りんとして、飛べるような気がしてくる。
それに、辺りに植えている樹木のニンフが踊りだしそうな気もしてくる。
この歌を歌い終わると…
小絵は、しばらくは目を閉じて、じっとしている。
不思議なことに、そんな時に限って…
新しいジュエリーのデザインが浮かんでくるからだ。
小絵の歌う声は、お腹の中の命にも、届いているだろう…


