そのうち、二人が愛し合う部屋にまで、レモンの香りが漂っていた。
結城は、その意味を知っているから…
小絵が結城に愛されて、喜びをあらわにするたび…
結城は、そんなレモンの木に、ウインクしていた。
もちろん、小絵にはわからないのように…
やがて、二人はカプリ島の夜のように愛の記憶を刻んだ。
小島の海が…
朝の光りで、さくら色に染まるころまで、
結城は小絵を愛し続けた。
やがて、海の色も元どうり…エメラルドグリーンに…
しかし、まだこの頃は…
太陽の光りは斜めから射しているだけだ。
だから、島の景色をくっきりとさせているのだ…
山の緑も、浮き雲も、桟橋のヨットも、額縁に収まるように…
そのことは、もうすぐ本格的な秋の近いことを知らせてくれている…
そんな、島の景色の朝にいた小絵は…
結城の腕の中で唐突にこう言った。
-あなた…
私のお腹には、あなたの赤ちゃんがいるの… -
「ええっ…何か言った♪
もう一度、言ってごらん」
-あのね…あなたの分身が、このお腹の中にいるの-
「ええっ…ほんとに。
まさか、冗談じゃないよね」
小絵はお腹を手で押さえながら…
-冗談じゃないわ♪
ほんとうのことなのよ-
「カプリ島の女神からの…プレゼント♪
なのかも…嬉しくて、涙がでそうだ…」
結城はきっと…そうなのだと信じた。


