結城は、そんな小絵にこう言った。
「大丈夫だよ♪
怖くないよ。心配しなくても…
ヨットは沈まないよ」
ヨットのベッドはウォーターベッドと同じだ。
小絵が激しく愛を刻むとベッドは弾んだ。
結城がたくましく小絵を愛したら、
ベッドは思い切り波を打ちあげては…
どんと、落とした。
そのたびに、小絵は結城を狂おしいくらいに愛していることを…
愛の記憶にきざんでいた。 夢のような一夜が明けていく…
でもこの海は、日本の海… カプリの海じゃないのだ。
しかし、二人はカプリの海の夜を想い…
あのカプリ島の時と同じ気持になっていた。
でも、ここにはレモンの木のニンフはいなかったが…
二人を乗せたヨットは… 結城と小絵の運命を知っているかのように…
音もなく、海の上を滑り出し、瀬戸内の海に浮かぶ、
カプリ島に良く似た島へと帆を張っていた。


