小絵の目の前には…
自分をさらけ出した結城がいる。
結城からの愛を感じていた。きっと、小絵に会えてほっとしたのだろう。
結城は、可哀相なくらい眠りこけていた。
『やっと、会えたわね♪
もう何処へも行かないで… あなた』
小絵は側にあったシ-ツを取り、眠っている結城にそっと掛けていた。
今は九月の終わりだが、まだ残暑がきつくて、
このヨットのキャビンの中も、ク-ラ-がなければ蒸し風呂だろう。
しかし、キャビンの中は適温にセットされていたから 快適だった。
小絵は、結城が眠っている間にベッドを整えておこうとさらに奥へと入っていた。
そこは、オ-ナ-ズ・アフトキャビンである。
ダブルベッドが置かれている。小絵は新しいシ-ツをかけ、枕も二つ並べた。
その後、小絵は何を思ったのか、その上にゴロッと… 横たわっていた。
『こんな日が来るなんてね。人の運命なんて…
ほんとうにわからないものだわ』
天井を見上げてそう思った。
人間の運命なんて、
どこでどうなるのかわからないものだ。
小絵にしても、今このヨットに乗り、こうしてキャビンのベッドに横たわっている。
おまけに、お腹には結城の子供がいるのだ。
小絵の運命の主軸は百八十度廻転したのと同じだ。
結城が目覚めるのを静かに待つ小絵はそう思った。


