振り返り、想うことは…
ルカに冷たく別れを告げたことへの、すまないという気持も忘れることはないだろう。
もちろん、一時でも愛していたのだから、元彼のルカのことも…
それから、小絵に金細工を教えてくれた、
ヴォッキオ橋の上に店を構える、金細工職人のルッチョさんのことも…
この人が、小絵に作品に使う材料の石を安く譲ってくれた…
そのおかげで、念願のラピスラズリの石も安く手に入り、
卒業作品を仕上げることができたのである。
しかし、その作品をコンクールに応募する気持は、
消え去っていた。
日本へ帰国する小絵は持ち帰るつもりだ。
小絵に代わってコンクールに応募した…のは、
元彼のルカである。
それを知った小絵は、彼に対して初めて、少し可哀相な気持になりかけたのだが…
思えば、彼は小絵のことがとても好きだったみたい。
でも、小絵は彼が好きだったのは小絵の身体だと… 思っている。
結局、三年も付き合っていながら、一度も結婚しようとは言わなかったからである。
だから、結城に出会ってからは、夢中になってしまった。
愛の記憶のシ-ソ-ゲ-ムの結果だろうか…
イタリアで思わぬ展開を迎えた小絵…
そんな三年間に…
-アッリヴェデルチ-
をしたのである。
そして小絵は、フィレンツェを後にし、ロ-マ空港へと向かっていた。
日本への直行便はロ-マからだ。


