そう…
小絵は妊娠していた。
カプリ島から、帰って二か月がたっていたが…
小絵の女の決まりごと…
いつもの、やっかいな…
つまり、毎月やってくる… やっかいな、お印はやって来なかったのである。
『私の身体の中には、新しい命が芽生えている。
この命は、まぎれもなく…結城の分身だわ 』
小絵は、きっとあの時だと想った。
カプリ島の最後の夜…
夜が明けるまで愛されたことを思い出していた。
間違ない…
だから、早く卒業して日本に帰国したい、そればかり考えている。
もう、コンクールなどは、どうでも良かった…
一日でも早く結城に会いたかった。
しかし、結城には妊娠したことは、言わないつもりだ。
何故かというと…
結城には、妻がいるからだ。
『日本に帰国したら、
直接結城に告げるわ。
きっと、結城も喜んでくれるに違いないから…』
小絵の手は、そっとお腹に当てられていた…
目を閉じ、愛しそうに結城の命を想った。
あれから、三か月がまたたく間に過ぎている。
やはり、今月もやって来なかった…
たいていの女は、やって来ないと大慌てであるが…
小絵は反対に嬉しくて、神に感謝したい気持になっていた。
愛する人の命を身ごもるというのは…
こんなにも、女を幸せにするものなのか。
小絵の場合ではあるが…


