お母様は視線を時貞に戻した。

「さて…恐らくは名のある武士の英霊殿…一度しか尋ねません。宮川修内太君を匿っている洋館の場所はどこですか?教えて下されば、命まではとりませんよ?」

「フン…」

地面に磔にされたまま、それでも時貞は顔色を変えなかった。

「自らが窮地に立たされたからと仲間を売るなど、武士の風上にも置けぬ…もとより一度は死んだ身だ。死すれば桃香姫のおそばに逝くだけの事…何を恐れる事があろうか」

彼が答えた途端に、『穿風』の魔術が背中に突きたてられる!

「うぐぅっ!」

「時貞!」

時貞が呻き、菊花が悲痛な声を上げた。

「何度も同じ問いかけをするのは嫌いです」

お母様は時貞ほどの剣豪を、まるで子供扱いだった。

「洋館の場所は?」

「殺せ」

時貞は額に汗を浮かべつつ言う。

「稀代の魔女、四門メグの伴侶を庇って逝けるのだ。闇の世界に生きる武士(もののふ)として、これ以上の誉れはない…!」