それは、案内板。

 僕の家はとっても大きいから、友達がいつも遊びに来る度迷子になってしまう。

 かくれんぼなんてこの家でしてしまったら、探し出すのに数日ぐらい必要になるかもしれない。・・・・・・冗談抜きで。

 そんなことになったら大変、とお母様が慌てるものだから、使用人達は急いで案内板を作った。

 使用人はお母様を大変慕っていて、1日に1度はお母様の笑顔が見れないと気がおかしくなるそうだ。



 
 こうして出来た案内板は、現在7個設置されている。これから増えるかもしれないし、減るかもしれないが、取り敢えず現在は7個。

 玄関ホールを始め、大広間や廊下、食堂、ゲストルームなど比較的人が行き来するところに案内板は置いてある。

 今僕の目の前にある案内板は、廊下にある案内板のひとつ、「東棟案内板」。


「・・・・・・寝室からかなり歩いたんだね。全然気づかなかった」

 寝室があるのは東棟最奥部。この案内板は東棟入り口に置いてあったはずだ。

 僕は案内板に目を通す。

「確かお父様の部屋は東棟3階・・・・・・。ここは1階だから階段を上がって・・・・・・」

 僕はこれから先歩くルートを呟き、頭に記憶させる。




 4、5回程繰り返し呟いて、やっと覚えることが出来た。

 (よし、行こう。)

 僕は使用人達に起こった悲しい出来事を伝える為、お父様の部屋へと急ぐ。

 ・・・・・・何か忘れている気もするが、多分気のせいだろう。