「あ……」

 ふと、僕はあるモノに気付いた。それは床に無造作に落ちていて、光っていた。

 僕はそれをそっと拾い上げ、良く見てみる。

 ……色は深海のようなマリンブルー。深い深い青色だ。

 角が無くツヤツヤしていて、ただの装飾用の石とは思えなかった。

 一瞬サファイヤかと思ったが、すぐにその考えは断ち切られた。

 ……なぜかって??

 その石の中には、水泡が入っていたから。

 水泡が入っている石はキズモノとみなされ、どんなに質が良くても値段はつかない。

 少なくとも、このツァニスト王国ではそういう決まりになっている。




「…………」

 僕はそっとその石をパジャマの胸ポケットに入れた。

(きっと使用人のお守りか何かだったんだろう……。それなら僕は形見として側に置いておきたい)

 この可哀想な使用人達を、僕は生涯忘れることはないだろう。

(万が一忘れてしまったとしても、石が思い出させてくれるさ……)

 僕はチラッと使用人達を見つめる。

 ……血の気のない青ざめた顔。

 ……正気を失い、どこを向いてるのか皆目つかない瞳。

「うっ……」

 見ていて涙が溢れて来た。



 自分達一家に良くしてくれた使用人達。

 色々教えてくれた使用人達。

 相談にも乗ってくれた使用人達。

 言動はロボットのようだったけど、感情はしっかりあった、使用人達。



「……何でこんなことが……!!」

 僕はグッと拳に力を入れ、その場に泣き崩れた。