使用人達の目に魂の光は宿っていなかった。

 つい数時間前まで慌ただしく屋敷中を駆け巡って、それぞれの仕事をこなしていたのが今では嘘のようだ。

 僕は使用人達に近付く為、震える足を懸命に前に持って行く。……怖くて怖くて、たまらないけど、真実を知りたい……。

 この人達の、生死を……確認しなくちゃ。

 まだ息がある人がいるかもしれない。

 僕は逃げたい衝動を抑え、ゆっくりと使用人達に近づいて行った。




 "本当に現実に起きた事なのだろうか??"

 ふと、そんな思いがよぎる。

 僕は悪い夢を見ているだけで、これは僕の空想にしか過ぎなくて。

 目を開けたら、窓から暖かい太陽の日差しが部屋いっぱいに注がれていて。

 廊下に出たら使用人達がいつも通りの挨拶を交わしてくれる。

 そしてお父様にその悪夢の話をして笑われて。

 ……大丈夫だよって、僕を落ち着かせてくれる。



(そうなんだ、これは……悪い夢なんだ。目を瞑って1、2、3……って数えれば、僕はこの悪夢から解放されるんだ)

 僕は自分自身にそう強く言い聞かせると、目を瞑った。

(……1……2……3……)

 しかし、目を瞑っても無駄だった。

 そっと目を開いた僕の目に映ったのは、さっきと1つも変わらない光景____________。