「だが、ちょうど2週間前になるが、
蓮はそれを断り始めたんだ」


 玲華は言葉が出なくなった。

2週間前といえば、蓮が玲華に

告白した日なのだ。もしかしたら、

蓮はこんな自分を嫌がると思って

悪から足を洗おうとしたのだろうか。

「こちらとしても、もちろん

そんなことされたら困る。

次の代として、かなり教え込んで

きたつもりだったからな。だから

俺は考えた。蓮を無理矢理にでも

連れ戻し、組織のために働いて

もらおうと。それを断るなら、

今、蓮の弱みでもあるお前を

人質にして使うつもりだった」


 まさか自分が蓮の弱みになっている

だなんて思ってもいなかった。

玲華は目の前が真っ暗になった気分

だった。涙が次から次へと零れ落ちていく。

「やめ…ろ。これいじょ…言うなっ」


 蓮は起き上がろうとして、必死に

体を支えた。

「蓮」


 玲華は蓮の名前を呼んだ。

「俺は組織に戻る。前以上に

誠実に働く。これでいいだろ、瀬戸。

だから玲華は家に戻してやってくれ」