キミノタメノアイノウタ


*******************************

「どうだ?俺の田舎は」

侑隆は座布団に座って、団扇で自身を仰ぎながら問いかけた。

「本当になにもないんだな…」

ファミレスも、コンビニも、ここには都会の喧騒もない。

……そのかわりに蝉の声や風の音、独特の土の匂いはするけれど。

俺は縁側に出て、硝子戸を開けた。ぶわっと芳しい夏色の風が吹き抜ける。日差しが眩しくて、目がくらみそうだった。思えばずっと長い間、外に出ていなかった。

「……ここなら養生出来るんじゃねえの?」

俺は決して振り返らなかった。家から連れ出して無理やりここに連れてきたのは侑隆だった。

侑隆は無言の拒絶を貫く様子を見て、そっとため息をついた。

「行ってみたいとこがあったら瑠菜に聞け。あいつも夏休みだし暇だろう」

「妹はいくつなんだ?」

「高3」

「受験生じゃないのか?」

高校をまともに卒業しなかった俺だってそれくらい知っていた。

「あいつは頭がいいから推薦をもらうんだろう」

侑隆の言葉に妙に納得した。飄々としている侑隆とは違って妹は真面目というか、地に足が着いてる感じだった。