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「どうだ?俺の田舎は」
侑隆は座布団に座って、団扇で自身を仰ぎながら問いかけた。
「本当になにもないんだな…」
ファミレスも、コンビニも、ここには都会の喧騒もない。
……そのかわりに蝉の声や風の音、独特の土の匂いはするけれど。
俺は縁側に出て、硝子戸を開けた。ぶわっと芳しい夏色の風が吹き抜ける。日差しが眩しくて、目がくらみそうだった。思えばずっと長い間、外に出ていなかった。
「……ここなら養生出来るんじゃねえの?」
俺は決して振り返らなかった。家から連れ出して無理やりここに連れてきたのは侑隆だった。
侑隆は無言の拒絶を貫く様子を見て、そっとため息をついた。
「行ってみたいとこがあったら瑠菜に聞け。あいつも夏休みだし暇だろう」
「妹はいくつなんだ?」
「高3」
「受験生じゃないのか?」
高校をまともに卒業しなかった俺だってそれくらい知っていた。
「あいつは頭がいいから推薦をもらうんだろう」
侑隆の言葉に妙に納得した。飄々としている侑隆とは違って妹は真面目というか、地に足が着いてる感じだった。



