私は逃げ続けていたんだ。 肝心なことはいつだって頭の中で。 言葉に。 音にのせなきゃ、相手の心には届かない。 ……それを教えてくれたのは灯吾だった。 (待ってよ…!!) 私はまだ灯吾に何も伝えられていない。 (行かないで……!!) 躓いた拍子に靴が片方脱げる。 私はまどろっこしくなって反対側の靴も放り投げて、そのまま走り出す。 時々、膝がズキズキと痛んだ。 私は構わず走った。 (灯吾!!) 心の中で何度も名前を呼ぶ。