カタンという物音が夢中で歌っていた私の歌声を止めた。
「あ…」
声のする方を見ると灯吾が頬をかいて姿を現した。
「ごめん、邪魔するつもりはなかったんだけど…」
手を合わせて謝る灯吾に、私は良いのと首を横に振った。
「何かあったのか?」
「ううん、何でもない」
灯吾に隠れて、そっと涙を拭う。
奏芽と元通りの関係に戻りたいなんて、そんなの都合がよすぎる。
きっと奏芽は許してくれない。
先ほどの出来事を悟られないように平静を装うとするが、灯吾の顔はまともに見られなかった。
奏芽に対して後ろめたい気分になる。
私は腫れた目を見られないように台所へと逃げた。
ステンレスの流し台に先ほどまで使っていたコップを置く。



