「うわっ!!待てよ!!」
俺は慌ててその背中を追いかけた。
不意をつかれてスタートが遅れたせいか、はたまた瑠菜の足が普通の女の子より速いせいか。
グングンと速度を上げていく瑠菜を見失わないように必死になって走る。
そうしている間にだんだんと青い緑以外の匂いがして、俺はようやくこの先にあるものの正体に気がついた。
心臓がドクドクと大きな音をたてる。
期待と憧れからか、早く早くと気持ちばかりが急いていく。
「もうすぐだよ!!」
瑠菜が夕日を背にして叫ぶ。
俺の目にも、もう見えてきていた。
急に視界が開けて、アスファルトが砂浜に変わった。
息を切らしている俺とは対照的に瑠菜は呼吸ひとつ乱していなかった。
そして、嬉しそうに笑っていた。
「どう?広いでしょー?この町、唯一の自慢!」
口元に手を当てて、俺に向かって叫んでいる。
その輝きといったらなかった。
ゆっくり息を吸って、呼吸を整える。目の前には視界を遮るものが一切なかった。
……雄大で、穏やかな、青い海が広がるばかりだった。



