(楽になる……?一体、何から……?)
汗で濡れたTシャツが背中に張り付いて、気持ちが悪かった。
……忘れることなんて許されない。
その思いが強くなればなるほど、心臓が押しつぶされたかのように苦しくなった。
「灯吾ー!!何してるのー?帰るよー!」
先を歩いていた瑠菜の声がして、ハッと我に返る。
「ああ、今行く」
俺は慌てて瑠菜の元へと駆け出した。
……瑠菜の声を聞いた瞬間、不思議と胸の痛みは治まっていた。
「また来いよー」
タツさんの底抜けに明るい声に見送られて、俺達は家路を急いだのだった。
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