「そろそろ帰ろうよ。涼しくなってきたし」
「そうだな」
瑠菜に同意して、温めていた地面から立ち上がる。
……空が少しだけ近くなる。
夕暮れは緑色一色だった畑を真っ赤に染めていった。林の奥でヒグラシが鳴いている。
気まぐれに吹く風は昼間に比べて少しだけ、涼しくなっていて心地良かった。
……俺はどれぐらい長い間ここにいたのだろう。
切り取られてない空が清清しくて。
あの街にはない風景が愛おしくて、胸が切なくなった。
……なぜか、泣きたくなる。
何もかも失くして空っぽな俺にとって、この風景はあまりにも綺麗すぎた。
忘れてしまいたい胸の痛みも、覚えていたい想い出も、情けない自分も。
洗いざらい吐き出して、楽になってしまいたいとさえ思う。



