「いい加減に離せよ、タツ!!」
「つまんねえな」
面倒そうに腕を払われたタツが今度はわき腹を肘でつつきだした。
……タツの奏芽いじりがまた始まった。
なんだかんだ言ってふたりは仲良しなのだ。
「私、帰るね」
もう、用件は済んだので帰り支度を始める。家に帰って夕飯の支度を手伝わなければならないからだ。
「瑠菜っ!!」
奏芽が慌てて呼び止めるが、既に遅い。
私は靴を履いて、玄関扉の前で首だけ後ろを向けた。
「じゃあね、奏芽。花火!!忘れないでよ?」
私はすっかり暗くなった道を自転車で駆け抜けていった。
……奏芽が何か言いかけていたことはすっかり忘れていた。



