(奏芽ってば、どこに行っちゃたのかな)
……もう日は殆ど傾いていて、せっかちな星は輝き始めているというのに。
私は奏芽と二人乗りをした海岸線の道路をひとり自転車で走っていた。
クルクルと車輪が回っていて、ときおり反射板が閃く。林のずっと遠くの方で蝉の声がした。
夏の終わりは刻一刻と迫っている。
頬に当たる風が時折、冷たい風を運んできていた。
……そのことに気づいて、なぜか切なくなった。
私はハンドルを右に切った。
(奏芽に会ったらうんと文句を言ってやるんだから)
花火大会のことを知らせるだけなら、メールでも電話でも良かったはずだった。
”高校生活最後の夏”
頭の中で千吏のセリフが響き渡る。
私は一路、恵じぃの家へと向かった。



