「おー、来たか」
タツは首にかけたタオルで顔についた汗を拭きながら、私達に笑顔を向けた。
「んじゃ、これな」
タツはハイッとさも当然のように灯吾に収穫用のハサミを渡した。
灯吾はキョトンとしてハサミとタツの顔を見比べた。収穫用のハサミは形状も持ち方も通常のハサミとは異なる。そんなものをいきなり渡されて、戸惑っているのは明らかだった。
……私は頭を抱えたくなった。
「もう、タツ!!」
(こんなことだと思った!!)
どうもおかしいと思っていたのだ。
野郎の相手なんてごめんだと言って、普段なら絶対に男の相手はしないくせに今日に限って灯吾を畑に誘うから。
私ですら裏があると勘ぐっていたのだ。
……まさか、農業体験の真似事をさせる気だったとは思いもよらなかったが。



