キミノタメノアイノウタ


「こんにちはー」

玄関の戸を開け放って叫ぶと、はーいと家の中から返事が聞こえた。

「おー瑠菜ちゃんじゃないか。タツならまだ裏の畑だよー」

襖を開けて居間から顔を出したのは恵三さんだった。恵三さん、通称“恵じぃ”はタツのおじいさんだ。

昔から自分の孫であるタツより私を可愛がってくれている。恵じぃには女孫がいないから余計に愛情を注いでくれるのだろう。

「恵じぃは手伝わないの?」

普段はタツと2人で仲良く畑に行くのに今日、恵じぃは居間にチョコンとひとりで座っていた。

恵じぃは口をヘの字に曲げて言った。

「瑠菜ちゃん、聞いておくれよ!!達広のやつが、恵じぃがいるとやかましい上に暑苦しくて適わないから家で大人しくテレビでも見てろと言ったんだ!!」

恵じぃは持っていた新聞をグシャリと握りつぶした。

私にはタツの気持ちがちょっと分かる。

(良い人なんだけどね……)

恵じぃはちょっとというか、かなり面倒な人ではある。

「達広め!!年寄り扱いしよって!!悔しいから大人しくテレビで大好きな“パイ娘”を見てたんじゃ!!」

テレビから“愛のキューピッド~♪恋のキューピッド~♪”とかいうふざけた歌が聞こえていた。

今、流行のアイドルグループである“パイナップル娘”だ。