「…ハイ…どうぞ」
一段と声を低くして言うと、私はシンクの前に戻って食器洗いを続けた。
「何をそんなに怒っているんだよ?」
兄貴が笑いをこらえるように呼びかける。それがまた、無性に腹が立つのだ。
奴は私がどうして怒っているのかお見通しなのだ。
(もう!!なんで言ってくれなかったのよ!!)
灯吾に兄貴の職業はフリーターだって言ってしまったではないか。
……どう考えても間抜けだ。
「瑠菜、お茶くれ」
呑気にテレビを見ている兄貴をキッと睨んでから、私は冷蔵庫から冷茶を取り出しコップに注いで持っていってやった。



