だから。 たとえ兄貴の身代わりでも。 ……父さんに嫌われたくなかった。 それは小さな世界の終わりを意味していた。 父さんに嫌われたくないから。失望されたくないから。 ……だから私はあの時、何も言えなかったのだ。 盛大な捨て台詞を吐いて教室から出て行く父さんを黙って見送った。 「臆病者……」 自分で自分を罵ってみても、何も変わらない。 私はこんなにもちっぽけな存在で、あまりにも幼稚だった。 ……前はこんな風に思わなかったのに。 きっと、灯吾の歌を聞いたせいだ。