「まさか…畑って見たことない…?」
「…ああ」
……私とタツはあんぐりと口を開けていた。
まさか、この世に畑を見たことがない人間がいるとは思わなかったのだ。
「マジかよ!!侑隆から聞いてたけど、お前ってホントに都会育ちなんだな!!」
(いくら都会でも畑はあるでしょう……)
どういう環境で生まれ育てばこういう人間が出来上がるのだろう。
タツは灯吾の肩にがっちりと腕を回し、ケラケラと楽しそうに笑った。
「瑠菜ー、あとで俺ん家の畑にこいつ連れてこいよ。面白そうだ」
「もう、タツ!!勝手に決めて……」
「……いや、行くよ。ここにいてもやることないし」
灯吾は食器をシンクに片付けながら言った。
「おうおう。行ってこい!!案外楽しめるかもな!!」
兄貴は適当に返事を返すと、灯吾とは異なり食器を放置したまま居間のテレビの前に寝転がり始めた。
「兄貴は行かないの?」
「なんで俺が今更、畑に行かなきゃなんねーんだよ」
こめかみがぴくぴくと動く。
(このクソ兄貴っ!!)
私は自分勝手な兄貴の言い分に思わず拳を振りかざしそうになった。



