(もうそんな季節だったのか……)
窓枠に頬杖をついて外の景色を見ながら物思いにふける。
ピアノをやっていた頃はすぐに月日が流れていた気がする。
こうして、じっくり雪を眺めることなんてしなかった。
ピアノは嫌いじゃない。
昔も……今も。
むしろ好きだった。
ただ怖くなった。
……あのまま続けていたらいつかピアノを嫌いになる日がやってくる。
母親の妄執は日を追うごとにひどくなっていった。
いつしか俺は自分の為にピアノを弾いているのか、母親の為にピアノを弾いているのか分からなくなった。
だから、俺はピアノをやめた。
コンクールに優勝できなくていい。
ピアニストになれなくていい。
……嫌いにだけはなりたくなかった。



