新しいにおい。新しい場所。本来なら、新たなテリトリーになった場所で安心するために、パトロールをしなければならないはずが、ホワイトにはどうしても、その気が起きませんでした。

 トラ毛の美しい猫、ミュー。彼女のことが頭から離れません。

 外は、田園風景。今まで住んでいた都会とは違います。

 ビロードの紐でつながれなくても、自由に外に出ることができます。
 
 「いくか・・・」

 かつての住処では経験できなかった、他のオス猫とのケンカで、ちょっぴりたくましくなった前足をソリソリと舌で手入れしながら、ホワイトは考えました。

 『もう一度ミューに会うため、旅に出よう』