「…俺たちは……


『いつ、何があっても…俺が君を守る。
だから、いつも…いつまでも、君は笑って俺の傍にいてほしい』

と…この桜に誓ったんだ」




「なんか…それって……」



「プロポーズだったんだよ。まだまだガキだった俺なりのプロポーズ」


「ロマンチック〜♪」



こんなに素敵な話なのに…2人の顔が曇っているのは何でだろう??



「…だけど、俺は約束が守れなかったんだ。


というより、約束したことですら、さっきまで忘れていたんだ。本当、しょうがない男だよ」



自嘲気味に笑う男性がなんだか寂しげに見えた。


「それ…どういう…」



「…何か邪魔しちゃって悪いな。」



男性は照れたように頭をかきながら車椅子を引いて帰ろうとした。


その時
「ま…待って……」


女性が桜を名残惜しそうに見つめている。



男性は女性のために舞い落ちる花びらを数枚手に取り、女性に渡した。



「帰ろうか」


男性は穏やかで優しい表情で女性に言った。


女性はコクンと頷いて男性からもらった花びらを嬉しげに眺めていた。