そこまでバルトが言った時、ぱちぱちぱちぱちと手を叩く音がした。

「さすがさすが」

ニッコリと笑む彼はまるで聖職者のようだ。隠し切れない凶々しい気を除けば、だが。


「君はやっぱり凄いね。この僕を追い詰めたぐらいだもの。まさか僕が負けをほんの少しでも意識するとはね」


さっきの笑みに挑発を混ぜて。それはそれは魅力的に、


「ま、勝ったのは僕だったわけだけど」


浮かべるのは余裕。


「は、それはそれは嬉しいこっちゃなあ」


にいっと皮肉気に、


「で?自慢する為だけにお前来たんや?」


浮かべるのは嘲り。


「まさか。返してもらいにきたんだよ。僕の天使をね」


返すのは爆弾。

漂うは緊張。


「ほ〜。天使、ね」


「おっと。もうこんな時間だ」

バルトの皮肉気な台詞をあっさりと交わし、呟くアルタイル

「今日のところは帰ってあげるよ。兄妹水入らずを邪魔しちゃ悪いしね」


すぅっとアルタイルの体が透き通っていく。

「待てや、コラ!」

「フフフ…。プレゼントを用意したから受け取っておくれ」

その言葉を最後にアルタイルの体は完全に消えた。


「ちっ。あンの野郎…!」

苦々し気に舌打ちをするバルト。それを一瞥してエドガーは一歩足を踏み出した。

「一先ず街へ戻るぞ」

「ああ」





 嫌な予感がした。


















誰もいなくなった広間。床一面に広がる惨劇の痕。室内を照らすランプの明かりが怪しく揺れた。